芥川龍之介 『父』

  • 2012.09.25 Tuesday
  • 10:29
なんとも切ない短篇です。

【あらすじ】
主人公(作者)が、中学4年の修学旅行の時の話です。
能勢という人を笑わせるのが得意な同級生が、集合場所で、通行人の特徴を捉えて辛らつなあだ名を付けるのに、同級生はウケまくっています。その時、体裁のあがらない風貌の男を見つけたひとりが「おい、あいつはどうだい」と、適当な形容を能勢にせがみます。実は男性は能勢の父親で、それを知っていたのは主人公だけでした。
主人公が「あれは能勢のファザァだぜ。」と言おうとした瞬間、能勢は「あいつかい、あいつはロンドン乞食さ」と言いました。

【わたしが子どもだったころ−姜尚中】
この短篇を読んで、『わたしが子どもだったころ』で姜尚中さんが語られたあるエピソードを思い出しました。
姜尚中さんは幼少期、永野鉄男という日本名で育ちました。家は、廃品回収業をしていました。鉄男少年は、その家業や家人の身なりを、恥ずかしく感じていました。
ある日友だちと遊んでいると、家業を手伝うオジサンが声をかけてきました。鉄男少年は、そのオジサンを無視し、他人のふりをしてしまいました。

番組では、姜さんが、その当時の様子を振り返り語られました。オジサンの淋しそうな後姿が瞼に焼きつき、複雑な思いと共に、心の澱としてずっと忘れられないと。

学校に通うようになると、家とは別の世界が開けます。友だちに「格好の悪い姿を見せたくない」というのは、誰でも思うことでしょう。大人になれば「なんで、あんなことが恥ずかしかったのだろう」と思うことが、当時の自分にとっては一大事だったこともあるでしょう。
大好きなオジサンを傷つけてしまった鉄男少年を、ひとごととは思えませんでした。

『父』には「中学の四年生には、その時の能勢の心もちを推測する明(めい)がない。」と書かれていますが、能勢少年のみならず、作者にとっても、心にも重く残る出来事だったのだと思います。
コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

selected entries

archives

recent comment

profile

search this site.

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< September 2018 >>

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM